「ブロガー出身」という意外な共通点を持つふたり。パソコン一台で孤独に仕事をし、心身ともに疲弊していた過去を持つ二人が、なぜ今「お茶」の世界に辿り着いたのか。
忙しい現代人こそ「お茶の時間」が必要な理由について、ゆったりとしたお茶の香りとともに語り合いました。
ブロガー時代の孤独と不安。二人が行き着いた「お茶」の世界

あんちゃ:
菅井さんは、茶肆ゆにわで働く前は、金融系のシステムエンジニア(SE)をされていたんですよね。
菅井:
はい。2016年からここのスタッフをしていますが、それ以前はSEとして働いていました。
ただ、仕事や人間関係がうまくいかず、2014年頃から副業でブログを始めたんです。
当時は漫画『ONE PIECE』の考察ブログを書いていて、ありがたいことに結構稼げるようにはなりました。
でも、生活は不健康そのもの。
ずっと家にこもってパソコンと向き合い、食事はコンビニ弁当、コーラとポテチばかり。
人との関わりも希薄になり、「このまま生きていて大丈夫かな」という不安に駆られていた時期に、「ゆにわ」と出会いました。
あんちゃ
そのお話、すごく分かります。
私も会社員を辞めてブログで独立し、3~4年は活動していました。
菅井さんのお話通り、だんだん引きこもるんですよね。
打ち合わせも全部オンラインで完結するので外に出なくなり、「このまま家で仕事して死んでいくのかな」と(笑)。
菅井:
一度はその疑問に行き着きますよね。
あんちゃ
私も「ゆにわ」と出会って通うようになり、初めて訪れたのがこの茶肆ゆにわでした。
当時はお茶に一切興味がなかったんですが。
菅井:
僕も同じです。
ペットボトルのお茶しか飲んだことがありませんでした。
「まず一杯のお茶を」。不安の渦中でお茶が教えてくれたこと

あんちゃ
ブロガー時代は、とにかく「稼ぐこと」に必死でした。
孤独だったし、頼れるのはお金だけだと思っていた。
だから、茶肆ゆにわで「何もせず、ただお茶を楽しんでください」と言われた時、どうしていいか分からなかったんです。
「お茶を楽しむとは?」と。
菅井:
何をしたらいいか分からない、という感覚ですね(笑)。
あんちゃ
今思うと、目の前のお茶すら楽しめないほど、心がざわついて余裕がなかったんだなと。
その心の在り方がそのまま映し出されていた気がします。
菅井:
僕も同じような経験があります。
ブロガー時代、Googleのペナルティ(検索結果に表示されなくなる)を受けて、収入が半減しそうになったことがあって。
「もう死ぬかもしれない」と不安でいっぱいになったんです。
その時、ゆにわの店長(こがさん)に「どんな状況でも、まず一杯のお茶を仕上げてください」と教わりました。
自宅で煎茶を淹れて飲んだ時、素直に「すごく美味しいな」と思ったんです。
その瞬間、「自分は何であんなに悩んでいたんだろう」と、ふと我に返ることができました。
お茶にはエネルギーを上げて、自分を救ってくれる力があるんだと実感しましたね。
デジタル時代にすり減る心。お茶が取り戻す「人間的感覚」
あんちゃ
現代はスマホやSNS、AIが当たり前にあって、知らず知らずのうちにエネルギーを奪われている感覚があります。
ぼーっとSNSを見ていたら一日が終わり、何もしていないのに疲れている、みたいな。
菅井:
まさに「目に見えないエネルギーの奪い合い」が起きているのかもしれません。
忙しい会社員や学生の方も、日々の中で「何のためにこんなに頑張ってるんだろう」と思う瞬間があるはずです。
そういう方にこそ、日常の忙しさを忘れ、ゆっくりとお茶を味わう時間を持ってほしい。
人生が全然違ってくると思います。
あんちゃ
デジタルな時代になればなるほど、こういうアナログな、ただ目の前のものを五感で味わう時間の価値が高まりますね。
菅井:
実は、戦国大名も戦の最中によく抹茶を嗜んでいました。それは単なる趣味ではなく、自分たちの命や国を守るためです。
緊迫した状況下で判断を誤れば、国も家族もすべて失う。
そんな時、抹茶を立てる時間が、自分の心を映し出す鏡としての役割を果たしていたんです。
お茶と向き合うことで、「これなら行ける」「これはまずい」と、自分の直感を確かめていた。
現代に物理的な戦争はありませんが、エネルギーが奪い合いになっているという意味では同じです。
わたしたちも、自分自身の心を見つめ、整える時間が必要なんです。
飲むと元気になる。茶肆ゆにわこだわりのお茶
ここで、菅井さんが二種類のお茶を淹れてくださいました。

🔸釜炒り茶「ほあかり」
菅井:
高知県の限界集落・大川村で、ご家族がすべて手作業、薪火100%で作っている非常に珍しい釜炒り茶です。
元伊勢籠神社の御祭神・火明命(ほあかりのみこと)という火の神様にちなんで「ほあかり」と名付けられました。
あんちゃ
(一口飲んで)ああ、すごく香ばしい。
まろやかなのに、火のエネルギーが凝縮されたような力強さも感じます。
体が柔らかくなるというか、呼吸が深くなる感じがしますね。
菅井:
ミネラルが豊富な土地で作られているので、体にスッと染み渡る感覚があると思います。
このお茶は何度も繰り返し淹れられるのも特徴で、僕は初めて飲んだ時、30分くらいずっと飲んでいました(笑)。
🔸煎茶「下鴨(しもがも)」
菅井:
これは下鴨神社の参拝セミナーにちなんだお茶で、玉依姫(たまよりひめ)という女性の神様を象徴しています。
直感や感性、エネルギーを受け取る力をテーマにした、非常に繊細なお茶です。
あんちゃ
(淹れ終わった茶葉を触って)
うわ! すごい、プルンプルン! ふわふわで、すごく柔らかいですね。
菅井:
これは「白葉(はくよう)」という珍しい品種で、樹齢100年以上の木から手摘みしています。
さっきの「ほあかり」は熱湯で淹れましたが、こちらは30~40度くらいの低温でじっくり淹れます。
あんちゃ
(一口飲んで)……なんだこれ!? すごい甘み! デザートみたいです。初めての味わいです。

お茶業界の危機と「本当にエネルギーのあるお茶」
菅井:
実は今、お茶業界は少し大変な状況にあります。空前の抹茶ブーム、特に海外での需要がすごくて、国内の抹茶が不足しているんです。
あんちゃ
ニュースでも見かけますね。
菅井:
その結果、本来は煎茶用だった茶畑を無理やり抹茶用に変えたり、旱魃(かんばつ)で弱っている茶の木を休ませずに酷使したり、ということが起きています。
短期的には売上が上がるかもしれませんが、中長期的には、日本のお茶の木自体が弱り、お茶のエネルギーがすり減ってしまっている。
これは、僕たちがブロガー時代にお金を稼ぎながらも疲弊していた状況と似ているかもしれません。
あんちゃ
目に見えるお金は入ってくるけど、目に見えない何かが失われていく感じですね。
菅井:
だからこそ茶肆ゆにわでは、流行に流されず、生産者さんが丹精込めて、手作業で作ったお茶を仕入れています。
今日飲んでいただいたお茶のように、飲むとシンプルに「元気になる」お茶。
そういうお茶こそが、今本当に必要なものだと確信しています。
「お茶習慣」のはじめかた
あんちゃ
お茶を淹れるというと、作法とか道具とか、ハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。
菅井:
僕もコーヒーを淹れていた経験がありますが、お茶もコーヒーも、淹れ手の心の状態がそのまま味に出ます。
「上手くやらないと」という緊張や、「手放せないこだわり」があると、味が変わってしまう。
あんちゃ
お茶を入れる時間は、心の修行であり、自分と向き合う時間なんですね。
菅井:
だからこそ、完璧にやろうとしなくていいんです。
「部屋が整ってないから」ではなく、まず目の前だけでも綺麗にして淹れてみる。
「急須がない」なら、まず湯呑みを一つ買ってみる。
大事なのは「まず一歩を踏み出すこと」です。
私も最初はそうでしたが、まずは21日間、どんな形でもいいから続けてみてほしい。
続けていく中で、味の変化や自分の心の変化に気づけるはずです。
あんちゃ
ぜひ、皆さんのご自宅から「お茶習慣」、始めてみてください。
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🍵 茶肆ゆにわ

〒573-1118 大阪府枚方市楠葉並木2丁目22-10-1F
https://maps.app.goo.gl/pwXXADq2GcAEYW3t6
営業時間:11:00~20:00(19:00 L.O)
定休日 :なし
ご予約 :072-864-5650
駐車場 :3台
アクセス:京阪本線 " 樟葉駅 "より
【徒歩】13分 または
【バス】京阪樟葉駅 1B・2A乗り場
"あさひ" バス停で下車、徒歩3分
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