紫外線対策が欠かせない季節となってきました。
日焼け止めクリームに加えて、
衣類で紫外線を防ぐという選択肢もあることをご存じでしょうか。
今回は、そんな紫外線対策にもなる特別な素材──
「藍(あい)染め」についてご紹介いたします。

藍染めといえば、やはり深く澄んだ藍色が印象的です。
しかし、その美しさの奥には、
古くから受け継がれてきた実用的な知恵が息づいています。
世界に根付く藍染め文化
世界各地には「インディゴ」と呼ばれる藍の植物が存在し、
それぞれの地域で独自の藍染め文化が育まれてきました。
たとえば、アフリカの砂漠地帯に暮らす民族が身につける
ターバンや衣類には、藍染めの布が使われることが多いそうです。

これは、藍染めの生地が紫外線を通しにくい性質を持っているため。
強烈な日差しから肌を守る、知恵に裏打ちされた装いなのです。
藍染めの魅力は、紫外線を防ぐことだけにとどまりません。
●抗菌作用
●虫よけ効果
●遠赤外線効果
●生地や糸を丈夫にする力
●藍草の薬効
これらの働きにより、藍染めの衣類は長持ちし、肌にもやさしいという特長があります。
長年にわたり世界中で愛され続けているのも、そうした理由によるのでしょう。
日本古来の正藍染を継承する「あいわゆう」さんの活動
さらに、藍染めには日本独自の技法である
「正藍染め(しょうあいぞめ)」という染め方があります。
この伝統的な技法を受け継いで
藍染の衣類をつくられているのが「あいわゆう」さんです。

▲左:あいわゆう野原和也さん(デザイナー) 右:あいわゆう野原未希さん(藍染職人)
あいわゆうさんは、藍染のなかでも、
「本建て正藍染」という、室町時代から続く
本来の藍染技法を取り入れて活動されています。
この技法の大きな特徴は、
微生物の力を借りて『醗酵』という手段で染め液をつくること。
現代は、醗酵させずに、
還元剤を使って化学的に染め液をつくる方法もあります。
それに比べると、
「本建て正藍染」という方法は、
とても繊細で、手間も時間もかかる染め方なんです。
ここでは、そんな正藍染の大きな流れを
ご紹介させていただきますね。
原料となるのは、藍の色をもつ藍草の「蓼藍(たであい)」の葉。
あいわゆうさんは、この「蓼藍」をタネから育てる
自家栽培をされているんです。

ただ、この藍草(蓼藍)に含まれる藍の色素は
水に溶けない(不溶性)性質のため、
草木染めのように煮出しで、染め液をつくることができません。
そのため、『醗酵』という手段で染め液をつくります。
蓼藍の葉を乾燥させて、堆肥状に発酵させてつくるのですが、
この染め液をつくるのに1~4週間もかかるんです。

▲あいわゆうさんの工房
染め液には、微生物の働きによって
藍の色素が溶けだしています。
その染め液の入っている甕(かめ)の中に布を入れて
1枚、1枚、手で染めていくのです。

藍の色素は、この液の中でだけ付着します。
布を染め液から取り出すと、
空気中の酸素と結合(酸化)して元の状態(不溶性)に戻るため、
色はつかなくなります。
そのため、正藍染めの衣類は、
色落ちがしにくく、色移りしない、ということも特徴なんです。

微生物の生命のぬくもりを感じる衣類へ
不思議なことに、正藍染めの衣類を身に着けた人は、
口をそろえて「あたたかい」とか「安心感がある」「身体の調子がよくなる」と言います。
それは、おそらく衣類の中に宿る微生物の生命を、
身体がどこかで感じ取っているからでしょう。

目には見えませんが、わたしたちは
微生物からたくさんの恩恵をうけています。
お味噌やお醤油、お漬物など発酵食品は
微生物たちの働きによるもの。
微生物が元気に、心地よく働いてくださることで、
味が美味しくなるのはもちろん、身体にも良い影響があります。
それは衣類でも同じこと。
微生物が生きている衣類をまとうと、
体内にある微生物と反応しあって身体の外と内を行き来します。
身体はそういった影響を受けるので、
「正藍染」の衣類を着たら身体の調子がよくなる、というわけなんです。
日本の文化と精神性が息づく正藍染めの衣。
日々の暮らしの中に、ひとつ取り入れてみてはいかがでしょう。
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「正藍染」の衣類についてもっと詳しく聞きたい!
そんな方には、「あいわゆう」さんのトークショーへどうぞ。
7月6日(日)(大阪・楠葉)
「あいわゆう」正藍染め作品の展示販売会とトークショー

正藍染めの魅力を語るトークショーは、参加費は無料です。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にお越しください。
今年の展示会とトークショーの詳細はこちら!
https://uniwamart.com/blogs/notice/aiwayuu
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こちらの記事でご紹介した「あいわゆう」さんの作品は、
「ゆにわマートオンラインショップ」にて販売しています。
